日本野鳥の会愛媛では、ガンカモ類生息調査や重信川河口鳥類調査、サシバの渡り調査など独自の調査を行い、県内に生息する野鳥について分布や生息数のデータを蓄積しています。
野鳥情報は、1974年の当会発足以降、126,000件超がデータベースに蓄積されており、毎月約300-500件の記録が追加されています。現在、これらの記録をもとに愛媛県鳥類目録の作成を進めています。しかし、まだまだ県内の分布状況を網羅的に把握しているとは言えず、しかも野鳥情報の投稿数は毎年減少傾向にあります。
現在約320名の会員数に対して、毎月野鳥情報を送っていただいているのは僅か10名程度。また、会員の約半数が松山市在住なので、どうしても観察地域に偏りが生じてしまいます(上図。2010-2020年の野鳥情報記録地点の分布)。さらに、夜間の観察が少ないことや、報告されやすい・されにくい種がいるために、東南予・沿岸・山間部、普通種・夜行性鳥類・海鳥の情報が不足しています。種名・地名間違いによるデータ漏れも少なからずあります。
そこで、少しでも入力ミスをなくし、多くの方から野鳥情報を投稿してもらえるよう、従来の入力フォームを改善・バージョンアップしました。新しいエクセルファイルはこちら(野鳥情報エクセル記入フォーム2021年版)。既に旧バージョンを利用している方も、2021年以降は新しいバージョンのご利用をお願いします。
また、頻繁に野鳥情報を提供してくださっている方は、毎月メールを送るのが面倒だと感じたことがありませんか?そうした手間を省いてもらうため、Googleスプレッドシート(エクセルと同じような感覚で使えるオンライン表計算サービス)を利用した情報共有も開始します。ご希望の会員の方は、調査担当とやりとりできる非公開の個人専用ページを作成いたしますので、事務局までメールでご連絡ください。
ただ単に「見た」という事実だけでは、極端な話、そこに鳥が存在しなかったのと同じになってしまいます。確実に「記録」し、そして「共有」することで、初めて意味のあるデータとして、その地域の生物多様性を示す証拠となり、将来の野鳥保全に役立てることができるのです。先述の当会ウェブサイト「記録を送る」からも会員・非会員問わず野鳥情報を集めていますので、興味がありそうな友人知人の方がいれば、お知らせください。今後より多くの野鳥情報を収集できるよう、会員の皆様のご協力をよろしくお願いいたします。
(調査研究担当・ホームページ担当)
(カット:安藤康子)
ツバメ調査について、皆さんからたくさんの情報提供ありがとうございました。最終的に40名程の参加者から440件を超える投稿がありました(ツバメ364件、イワツバメ37件、コシアカツバメ49件)。また、自宅周辺の営巣状況について詳細に調べた結果を、ハガキで送ってくださった方もいました。下地図の点は各種の観察地点、グラフは観察内容の割合を示しています。
【ツバメ】
ツバメは全域にまんべんなく分布しているように見えますが、やはり採餌や巣材集めに必要な田畑がほとんどない松山市中心部の観察点は、郊外の住宅地に比べて少ないようです。コロニー繁殖している場所は数か所のみで、ほとんどありませんでした。近年、県内の田畑は次々と潰されて宅地化されてきています。何年後かに同じような調査を実施すれば、その影響が明らかになるかもしれません。ツバメについては、ねぐらの情報も募集していましたが、ねぐらを見たという投稿は今回1件のみでした。ツバメのねぐらは河川や湖沼のヨシ原に作られることが多いのですが、そうした環境が少なくなってきたこともあり、数千~数万羽が集まる大規模なねぐらは全国的にもほとんど見られなくなってしまいました。ただ、小規模なねぐらは各地に点在しているようです。これからの8~9月にかけては、巣立った幼鳥や渡り途中の個体が多く集まり、繁殖期中よりもねぐらが観察しやすい時期です。もし見かけた場合は、情報提供をお願いします。
【イワツバメ】
イワツバメは平地から山間部の河川沿いの橋桁に多く営巣しており、島嶼部では観察されませんでした。3種の中で一番コロニー繁殖の割合が多かったです。県内での繁殖記録は、以前はほぼ山間部に限定されていたのですが、つい最近になって、低地でも繁殖するようになってきたようです。
【コシアカツバメ】
コシアカツバメは、河川もしくは海岸沿いの大きな建物がある場所にまばらに分布していることが分かりました。コシアカツバメは1990年代から観察記録が増えてきた種で、その頃は大きなコロニーや群れが観察される事もありました。しかし、近年では比較的小規模な集団で、ツバメやイワツバメに混じって営巣していることもあるようです。
●(青:ツバメ)●(黒:イワツバメ)●(赤:コシアカツバメ)
ツバメは毎日ごく普通に見かける種類のため、なかなかまとまった記録が集まりませんが、今回の調査によって、県内の大まかな分布傾向を把握することができました。過去、そして将来の分布変化を把握することは、野鳥保全のための大切な手がかりとなります。スズメやカラスなど普通種の情報も、貴重な記録となります。引き続き野鳥情報の提供にご協力ください。
以下のサイトでは引き続き全国的なツバメの繁殖分布調査を実施していますので、情報提供をお願いします。フンに困っていたり、雛が落ちていたりした場合の対応は、バードリサーチのツバメ対応マニュアルをご覧ください。
・ツバメの子育て状況調査(日本野鳥の会)
・ツバメ観察全国ネットワーク(バードリサーチ)
環境省のモニタリングサイト1000では、全国1000か所程度のモニタリングサイトを100年間観測することを目指しています。その結果から生態系の変化を早期に把握し生物多様性保全に活かそうとするものです。
当会でも調査に協力していますが、各地域でさまざまな調査活動をされている方の成果発表や情報交換を通して、参加者同士の交流を深めることを主な目的として研修会を実施します。研修会は2日間にわたって開催し、1日目は事業紹介とこれまでの成果報告、参加者による事例発表、鳥類と植生の調査方法の説明についての室内講義を行ないます。2日目は野外実習で、鳥類と植生の調査を実際に体験していただきます。
調査未経験の方からベテランの方まで歓迎です。みなさまのご参加お待ちしております。参加を希望される方は、以下の要項をお読みいただき、申し込みフォームからご登録下さい。
申し込みフォーム(ページ下部)。
https://www.wbsj.org/activity/conservation/research-study/monitoring1000/moni1000-training/
2020年1月18日(土)~19日(日)
1日目 13:00-17:00
場所:プログレッソ イベントルーム パーク(松山市駅のすぐ近く)
室内講義:モニタリング1000の事業概要とこれまでの成果の紹介。
参加者による事例発表と情報交換。講義終了後、懇親会。
※支部活動、個人の活動に関わらず、話題を提供いただける方を募集します。発表内容や方法については、お申し込みの際にご相談ください。
2日目 9:30-12:00
場所:愛媛こどもの城周辺 (松山市駅8:30発のバスをご利用下さい)
野外実習:鳥類のスポットセンサス法と簡易植生調査の説明と実習(少雨決行)
当会が2017年度におこなった活動をご報告いたします(クリックするとPDFが開きます)。
日本野鳥の会の理念として「自然を尊び守り賢明に利用することが、人類の存続と幸福にとって不可欠であるとの認識にたち、野鳥を通して自然に親しみ自然を守る運動を、社会の信頼を得て発展させることによって、自然と人間が共存する豊かな環境をつくることに貢献する」というものがあります(詳しくはこちら)。
その理念に則り、当会でも普及啓発や調査保全などの各種活動を展開しています。
県内のカモ類の越冬状況(種数・個体数)を調べます。調査員を募集しますので、調査に参加希望される方は、ページ下部にある当会事務局の連絡先まで電話もしくはメールでお知らせください。
調査は愛媛県からの委託事業として受託し、各調査地点の代表者に一カ所あたり数百円の調査費を支給いたします。
併せて、バードリサーチが行っている調査にも参加してみてください。
http://www.bird-research.jp/1_katsudo/index.html#mizudori_moni
県内のカモ類の越冬状況(種数・個体数)を調べます。調査員を募集しますので、調査に参加希望される方は、当会事務局まで電話もしくはメールでお知らせください。
調査は愛媛県からの委託事業として受託し、各調査地点の代表者に一カ所あたり数百円の調査費を支給いたします。
併せて、バードリサーチが行っている調査にも参加してみてください。
http://www.bird-research.jp/1_katsudo/gankamo_kisetu_henka/
報告者 : 楠木憲一
鳥類の渡りで有名な伊良湖岬を通過し、紀伊半島から四国を西進して九州に渡っていくサシバの愛媛県内での渡り調査については、全国的なサシバの渡りルート調査が行われ始めた1980年代から始まりました。1995年には愛媛県支部会員 故 猪野 茂氏らにより、高茂岬の約20 km北側に位置する由良半島でのサシバの渡りが確認されました。その後、2つの観察定点を調査することによってタカの渡りの傾向に関する多くのことが分かってきています。
より大きな地図で タカの渡り観察場所 を表示
確認した渡り羽数は年ごとに大きく変化しています。渡っていくコースの幅が広くて観察定点からは確認できない通過群が多いことが原因と考えられます。
調査を実施した高茂と由良の渡り調査結果からは、近年繁殖地で云われているサシバ生息数の大幅な減少傾向はあまり感じられません。
二つの調査地の渡り時期には大きな違いがあることから、由良半島を通過する群は中央ルート(白樺峠)からの通過群であり、高茂岬の通過群は東ルート(伊良湖岬)からのものが多いことが分かってきていますが、伊良湖からの群と思われるものが、気象条件等により高茂岬でなく由良半島を通過する時がかなりあります。
高茂岬、由良半島共に早朝の渡り羽数が多いのは、海を渡る場合のタカ類の渡り行動の特徴です。高茂岬ではその後の11時と 2時頃にピークがあります。
早朝の渡り開始は由良半島では 6時になった途端に大量の渡りが見られます。高茂岬でも 6時になると飛び始めますがピークは6時半頃です。その理由としては由良半島では塒場所が半島の付け根付近にあり、観察定点に近いため出現する時間が早くなり、高茂岬については岬の近くで塒入りするものが少なく、大きな群の通常の塒場所は20km位離れているために通過時間が30分前後遅くなっていると考えられています。
由良半島では一日に3,000羽を超える通過は見られませんが、高茂岬は大量通過する日数が多く10日も出現しています。特に500~999羽については由良半島の約1.5倍の出現日数になっています。しかし、100~499羽が通過する日については由良半島の方が多くなり、1.5倍以上の出現日数となっています。
高茂、由良共に大量通過日の時間別の通過状況は、かなり似かよったラインになっています。近年の大量通過年が高茂は少なくて、由良は多い傾向にあります。
愛媛県では二つの観察定点を1995年から連続して調査しています。渡りのピーク時期には毎年「タカの渡り観察会」も開催しています。由良半島の「タカの渡り観察会」は9月下旬、高茂岬は10月10日頃に開催しています。澄みきった秋空のなかを高く、低く、たくさんのタカの群が、海上遠くに見えている九州を目指して次々に渡っていく光景は、私たちの心に震えるような大きな感動を与えてくれます。最高に美しい愛南町の自然のなかで、全く音のないことがとても不思議な、大きな感動のあるタカの渡りの世界を、是非一度体験してみて下さい。
(最終更新日:2011年9月10日)
日本野鳥の会愛媛では、生息・分布情報が不足している地域・種を近年特に重点的に調査しています。例えば、オオミズナギドリ・カラスバト・カンムリウミスズメ・ミゾゴイ・コノハズクなどです。こうした調査は、広範囲をカバーする必要があり、人手やお金がかかるため、外部資金を得る必要があります。これまでに以下の助成金を受けて調査を行いました。
- 伊予銀行環境基金エバーグリーン(2008)300,000円 宇和海島しょ部における生息鳥類調査. 日本野鳥の会愛媛県支部 代表:山本貴仁
- 三浦保愛基金(2008)98,000円 愛媛県における夜行性鳥類の分布調査. 日本野鳥の会愛媛県支部
助成金を受けるためには、応募書類の作成、調査計画のプレゼン、調査結果の報告など様々な苦労がありますが、こうした制度を積極的に利用することで、企業や一般のへ当会の活動を広くアピールすることにつながる上、私たちの実績にもなります。
2002ー2003年度には、松山市の委託を受け、市街地に生息するカラスの生態調査をおこないました。