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ヒバリ 2005.6.10 新居浜市多喜浜 撮影:林利夫

これまで13万件近くのデータがある当会の野鳥データベース記録ですが、どうしても地域に偏りがあり、普通種であっても全域で記録されていないものもあります。

例として、記録件数が多く(ほぼ)県内全域に生息していると思われるが、記録された市町に抜けがある(あと数か所で全域が埋まる)ものを下図に示しました(クリックすると拡大表示されます)。黒は観察された月、緑は観察された市町、セルの数字は報告件数です。

久万高原町、松野町、鬼北町で抜けが多いことが分かります。これらの地域は会員が少なく、アクセスがしにくいこと、水辺の環境が少ないことが要因でしょう。しかし、この場所で見たことある(でも野鳥情報は送っていない)という方もいらっしゃるはずです。このリストからさらに簡単に見つけられそうな種類を抜き出すと、以下になるでしょうか。

松前町 ヤマガラ・シジュウカラ・エナガ
砥部町 ダイサギ・トビ・ヒバリ・ハクセキレイ
東温市 コサギ
久万高原町 ムクドリ・ハクセキレイ
上島町 ヒバリ
八幡浜市 ヒバリ・セッカ
鬼北町 スズメ・ハクセキレイ

これらを見かけたら、是非「記録を送る」から過去の記録を含めて野鳥情報を送ってください。会員外の方からの情報も大歓迎です。

今後、注目種として情報の少ない種や抜けがある種について、目録を充実させるためデータ補完を強化していきたいと思いますので、皆さんのご協力よろしくお願い致します。

野鳥情報は、1974年の当会発足以降、126,000件超がデータベースに蓄積されており、毎月約300-500件の記録が追加されています。現在、これらの記録をもとに愛媛県鳥類目録の作成を進めています。しかし、まだまだ県内の分布状況を網羅的に把握しているとは言えず、しかも野鳥情報の投稿数は毎年減少傾向にあります。

現在約320名の会員数に対して、毎月野鳥情報を送っていただいているのは僅か10名程度。また、会員の約半数が松山市在住なので、どうしても観察地域に偏りが生じてしまいます(上図。2010-2020年の野鳥情報記録地点の分布)。さらに、夜間の観察が少ないことや、報告されやすい・されにくい種がいるために、東南予・沿岸・山間部、普通種・夜行性鳥類・海鳥の情報が不足しています。種名・地名間違いによるデータ漏れも少なからずあります。

そこで、少しでも入力ミスをなくし、多くの方から野鳥情報を投稿してもらえるよう、従来の入力フォームを改善・バージョンアップしました。新しいエクセルファイルはこちら(野鳥情報エクセル記入フォーム2021年版)。既に旧バージョンを利用している方も、2021年以降は新しいバージョンのご利用をお願いします。

また、頻繁に野鳥情報を提供してくださっている方は、毎月メールを送るのが面倒だと感じたことがありませんか?そうした手間を省いてもらうため、Googleスプレッドシート(エクセルと同じような感覚で使えるオンライン表計算サービス)を利用した情報共有も開始します。ご希望の会員の方は、調査担当とやりとりできる非公開の個人専用ページを作成いたしますので、事務局までメールでご連絡ください。

ただ単に「見た」という事実だけでは、極端な話、そこに鳥が存在しなかったのと同じになってしまいます。確実に「記録」し、そして「共有」することで、初めて意味のあるデータとして、その地域の生物多様性を示す証拠となり、将来の野鳥保全に役立てることができるのです。先述の当会ウェブサイト「記録を送る」からも会員・非会員問わず野鳥情報を集めていますので、興味がありそうな友人知人の方がいれば、お知らせください。今後より多くの野鳥情報を収集できるよう、会員の皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

(調査研究担当・ホームページ担当)

(カット:安藤康子)

ツバメ調査について、皆さんからたくさんの情報提供ありがとうございました。最終的に40名程の参加者から440件を超える投稿がありました(ツバメ364件、イワツバメ37件、コシアカツバメ49件)。また、自宅周辺の営巣状況について詳細に調べた結果を、ハガキで送ってくださった方もいました。下地図の点は各種の観察地点、グラフは観察内容の割合を示しています。

【ツバメ】
ツバメは全域にまんべんなく分布しているように見えますが、やはり採餌や巣材集めに必要な田畑がほとんどない松山市中心部の観察点は、郊外の住宅地に比べて少ないようです。コロニー繁殖している場所は数か所のみで、ほとんどありませんでした。近年、県内の田畑は次々と潰されて宅地化されてきています。何年後かに同じような調査を実施すれば、その影響が明らかになるかもしれません。ツバメについては、ねぐらの情報も募集していましたが、ねぐらを見たという投稿は今回1件のみでした。ツバメのねぐらは河川や湖沼のヨシ原に作られることが多いのですが、そうした環境が少なくなってきたこともあり、数千~数万羽が集まる大規模なねぐらは全国的にもほとんど見られなくなってしまいました。ただ、小規模なねぐらは各地に点在しているようです。これからの8~9月にかけては、巣立った幼鳥や渡り途中の個体が多く集まり、繁殖期中よりもねぐらが観察しやすい時期です。もし見かけた場合は、情報提供をお願いします。

【イワツバメ】
イワツバメは平地から山間部の河川沿いの橋桁に多く営巣しており、島嶼部では観察されませんでした。3種の中で一番コロニー繁殖の割合が多かったです。県内での繁殖記録は、以前はほぼ山間部に限定されていたのですが、つい最近になって、低地でも繁殖するようになってきたようです。

【コシアカツバメ】
コシアカツバメは、河川もしくは海岸沿いの大きな建物がある場所にまばらに分布していることが分かりました。コシアカツバメは1990年代から観察記録が増えてきた種で、その頃は大きなコロニーや群れが観察される事もありました。しかし、近年では比較的小規模な集団で、ツバメやイワツバメに混じって営巣していることもあるようです。

(青:ツバメ)(黒:イワツバメ)(赤:コシアカツバメ)

ツバメは毎日ごく普通に見かける種類のため、なかなかまとまった記録が集まりませんが、今回の調査によって、県内の大まかな分布傾向を把握することができました。過去、そして将来の分布変化を把握することは、野鳥保全のための大切な手がかりとなります。スズメやカラスなど普通種の情報も、貴重な記録となります。引き続き野鳥情報の提供にご協力ください。

以下のサイトでは引き続き全国的なツバメの繁殖分布調査を実施していますので、情報提供をお願いします。フンに困っていたり、雛が落ちていたりした場合の対応は、バードリサーチのツバメ対応マニュアルをご覧ください。
ツバメの子育て状況調査(日本野鳥の会)
ツバメ観察全国ネットワーク(バードリサーチ)

76件の広告がありました。「繁殖」は20件、「生息」が7件、「生息しない」が49件です。 松山市、伊予市、西予市以外の地域の報告をお待ちしています。

最終更新日: 2020年04月11日