当会では野鳥を守るため、そして私たちが安心して暮らせる未来を目指して、地域の環境保全に貢献しています。
愛媛県内の鳥類生息調査や目録作成を軸として、希少種保全の調査、風力発電や林道建設に対する行政に向けた意見提出、違法な密猟取り締まりへの協力など、様々な取り組みをおこなっています。ここではその活動の概要を紹介します。
重信川河口の干潟を利用するシギチドリ類を主として、岩本孝氏を中心に1996年から毎月カウント調査を実施しています。全国的にも貴重な長期的な個体数変化のデータが蓄積されています。会員の方なら誰でも参加できますので、詳しくはトップページ下部をご覧ください。
2023年には「重信川河口鳥類調査報告書」が出版されました。報告書には1996年6月から2021年5月までの25年間372回に及ぶ調査で確認された174種全てについて、カウントデータと解説が掲載されています。
ガン・カモ類の全国生息調査は昭和45年からおこなわれており、現在は環境省が中心となって毎年1月に一斉実施されています。当会は愛媛県からの委託を受け、会員の協力を得て県内全域の水域をまわり、カウント調査を行っています。
希少種保全のために定期的に発行されるレッドデータブックの鳥類についてデータ提供や執筆などを担当しています。また、愛媛県産鳥類目録を鋭意作成中で、データベースの整備および編集作業を進めています。
・日本のレッドデータ検索システム
・愛媛県レッドデータブック2014
・松山市レッドデータブック2012
資料集
・愛媛県総合科学博物館研究報告(2001)愛媛県岩城島鳥類目録
・愛媛県総合科学博物館研究報告(2007)愛媛県越智郡上島町赤穂根島総合生物調査
・松山市環境部・松山市野生動植物目録(2012)松山市産鳥類目録第2版
・県民環境部自然保護課生物多様性係愛媛県産野生動植物目録(2014)鳥類
・西条市バードウォッチング(西条市ホームページ)
・松山中央高校バードウォッチング部(2021)重信川中流域鳥類図鑑
環境省では全国に1000ヶ所程度のモニタリングサイトを設置し、日本列島の多様な生態系に関する基礎的な環境情報の収集を長期にわたって継続し、日本の自然環境の質的・量的な変化を調べることを目指しています。愛媛県内に設置されたモニタリングサイトの調査について、当会が協力しています。
・モニタリングサイト1000とは(環境省)
・愛媛県内のモニタリングサイト(環境省)
日本では古くから「ツバメが巣を作ると縁起が良い」と言われ、商売繁盛のシンボルや害虫を食べる益鳥として人々はツバメを守ってきました。しかし近年では糞害などを理由に巣を落とされたり、餌や巣材の提供場所となる田んぼの減少により生息数が減少しています。(財)日本野鳥の会では、人とツバメの共存が続くことを願い、2019年度からツバメの巣や生息環境を温かくみまもっている企業・団体に感謝状を贈呈しており、当会も協力しています。
・大洲市立河辺小学校(2022)河辺小学校日記での紹介記事
・大洲市立肱川小学校(2022)
・有限会社森松交通(2021)
・有限会社空港タクシー(2021)
・ローソン道後ハイカラ通店(2021)
県内における希少種の分布状況を明らかにするため、オオミズナギドリ・カラスバト・カンムリウミスズメ・ミゾゴイ・ウチヤマセンニュウなど特定の種について重点的に調査を行ったり、助成金の申請等もおこなっています。
・西尾喜量(2023)愛媛県今治市宮窪町九十九島におけるウチヤマセンニュウ Locustella pleskei の観察記録. 愛媛県総合科学博物館研究報告 28: 39-44.
・伊予銀行環境基金エバーグリーン「まつやまコアジサシ子育て応援プロジェクト」(2020年度, 2021年度)
・小川次郎・渡辺奈央・松井宏光・大森浩二(2016)瀬戸内海忽那諸島およびその周辺島嶼部における絶滅危惧種ウチヤマセンニュウ Locustella pleskei の生息状況. Strix 32: 125-133.
・愛媛新聞ONLINE 絶滅危惧種ウチヤマセンニュウ 新たに県内6島で確認(2016.09.05掲載)
・伊予銀行環境基金エバーグリーン(2008年度)「宇和海島しょ部における鳥類生息調査」
・「三浦保」愛基金環境保全・自然保護分野助成によるフクロウ及びミゾゴイなどの夜行性鳥類調査
・山本貴仁・小川次郎(2006)愛媛県におけるオオヨシキリ Acrocephalus arundinaceus の分布状況. 愛媛県総合科学博物館研究報告 11: 11-19.
佐田岬半島や由良半島付近は毎年数多くのワシタカ類の重要な渡りルートとなっており、その経年変化を毎年調査しています。秋期には調査を兼ねて観察会も実施しています。
・タカの渡り調査
・タカの渡り全国ネットワーク(当会も情報提供をおこなっています)
当会では会員からの野鳥情報を常時収集していますが、特定種についてウェブサイトの投稿フォームから気軽に情報提供できる、会員参加型調査を随時実施しています。これまで以下の調査を会員に呼びかけて実施しました。
・ツバメ3種分布調査
・カイツブリ繁殖調査
・ウグイス初鳴き調査
・ツグミ初認調査
・ジョウビタキ初認・分布調査
ナベヅルの世界の生息数は1万5千羽程度ですが、鹿児島の出水ではその約9割の1万3千羽以上が越冬しています。このように密集して越冬すると、鳥インフルエンザなどの感染症による大量死など、絶滅してしまうリスクがあります。そのため、全国に越冬地を分散させる取り組みが行われています。また、兵庫県で保護増殖・野生復帰事業が行われているコウノトリについても、愛媛県内に飛来しており定着の可能性があることから、当会では西予市において、地元や日本野鳥の会本部などと協力し、ナベヅルなどのツル類、およびコウノトリを誘致するための調査活動を行っています。
・宇和コウノトリ保存会への協力・支援活動
– 国土交通省 四国地方整備局 河川部 四国圏域生態系ネットワーク推進協議会資料(2020年度)
– 伊予銀行環境基金エバーグリーン(2019年度)
– 三浦保基金(2010年度)
・ツル類に関する当会の取り組み記事一覧
・ナベヅル・マナヅルの越冬地保全の取り組み(日本野鳥の会)
・ナベヅルのねぐらの利用状況について(日本野鳥の会 発表資料)
野鳥だけでなく生態系全体、そして自然景観にも影響を及ぼす風力発電や林道建設に関して、問題提起をおこなっています。
・保全活動に関する記事一覧
・松田久司(2007)バードストライクについての四国初の事例報告 ‐佐田岬半島の風力発電施設におけるトビの衝突死‐. Strix 25: 105‐107.
・野鳥と風力発電(日本野鳥の会)
・風力発電施設と野生生物保護(環境省)
日本の野鳥は、原則、捕獲・飼養が禁じられています。しかし現行法では、外国から輸入された野鳥の販売や飼養への規制がほとんどなく、そのため国内で密猟された野鳥を外国産と偽って販売する事件が絶えません。当会でも全国野鳥密猟対策連絡会や警察と連携しながら、取締りの要請、種の鑑定、啓発活動を行っています。
繁華街で塒をとるカラスによる糞害やゴミ荒らしへの対応について、専門家の立場から行政へ助言をおこなっています。松山市の繁華街ではミヤマガラスが冬季塒を形成しており、その個体数が多いことから問題となっています。
・山本貴仁・小川次郎・丹下一彦・秋山勉(2005)ミヤマガラスの都市型塒. Strix 23: 149-152.
・鷹匠を活用したカラス対策(松山市役所環境モデル都市推進課)